相続通信 2018年11月号
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配偶者居住権の創設

 

 かけはし9月号では、40年ぶりに大きく改正・見直しが行われた相続に関する法律を概要でご紹介しました。今月号では、その中から「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」に焦点を当てて取り上げたいと思います。

配偶者短期居住権とは

 被相続人の遺産である自宅建物を配偶者が相続することができなかった場合でも、相続開始の日から6カ月又は遺産分割によりその自宅建物の帰属が確定した日のいずれか遅い日までは、配偶者が自宅建物に無償で居住し続ける事ができる権利。
この制度がないと、配偶者が住んでいた家を配偶者以外の人が相続した場合、相続した人は配偶者を即座に家から追い出すことが可能となってしまいます。それでは配偶者の生活が困難となってしまうため、最低でも6カ月は無償で住み続ける事を認めようという制度です。
ただし、被相続人の死後も配偶者がある程度の期間は無償で生活できることを保障するための権利であるため、配偶者がその自宅建物に相続開始時点で無償で居住していたことが条件となります。

配偶者居住権とは

 被相続人の遺産である自宅建物に配偶者が所有権を相続しなくても無償で居住し続けることができる権利。ただし、配偶者が相続開始時点でその自宅建物に居住していたことと次の①から③のいずれかを満たすことが条件となります。

①遺産分割によって配偶者居住権を取得すること

②配偶者居住権が遺言によって遺贈の目的とされること

③被相続人と配偶者との間に配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約があること

現行制度の問題点

 日本では不動産が高額なため、現行制度では配偶者が自宅不動産を取得した場合、その自宅不動産が法定相続分のほとんどを占めてしまい、預貯金など他の財産を受け取れなくなってしまうという問題点があります。そのため配偶者には、住む場所はあるが日々の生活費や万一の場合の資金がない、又は、現金はあるが安定して住める場所がないといった問題が起こります。

新制度創設によるメリット

 新制度では、自宅不動産を配偶者居住権と負担付所有権に分けて遺産分割することが可能となります。例えば配偶者居住権を1,000万円、負担付所有権を1,000万円とした場合、現行制度では配偶者が自宅に住み続けるためには合計2,000万円分を相続しなければなりませんでしたが、新制度では配偶者居住権1,000万円分のみ相続すれば自宅に住み続ける事ができ、預貯金を1,000万円多く受け取ることも可能となります。
紙面の都合で詳細は載せられませんが、法務省のホームページに図解等がありますので、こちらをご覧いただくと理解しやすいかと思います。

法務省HP http://www.moj.go.jp/content/001263589.pdf

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