相続通信 2018年12月号
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続・相続法改正

 

 9月号では、40年ぶりに大きく見直し・改正された相続に関する民法等の規定(相続法)について概要をお伝えしましたが、今回はその中からいくつかピックアップしてお伝えしたいと思います。

自筆証書遺言に関する見直し

●ポイント

 自筆証書遺言の方式緩和として、自筆証書にパソコン等で作成した目録を添付したり、預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付して遺言書を作成できるようになる。

 

●現行制度

 現行制度では自筆証書遺言を作成する場合には、すべての文書を自書(自分で手書きする)する必要があり遺言者の負担が大きい。特に財産が多数ある場合には相当な負担となる。

 

●新制度のメリット
 パソコンなどで作成した自書していない財産目録を添付することができるので、遺言者の負担が軽減される。(財産目録には署名押印しなければならないので、偽造防止できる。)

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

●ポイント

 相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになる。

 

●現行制度

 現行制度では相続人以外の者は、被相続人の介護に尽くしても相続財産を取得することができない。つまり、相続人であれば介護を全く行っていなくても相続財産を取得できるが、相続人以外の者は一生懸命に介護に尽くしたとしても相続財産を取得することができない。

 

●新制度のメリット

 例えば相続権のない被相続人の長男の妻(養子縁組している場合は相続権がある)が、相続人に対して金銭の請求をすることができる。

長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護するための施策

●ポイント

 婚姻期間が20年以上である配偶者が、その居住の用に供する建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については、原則として計算上遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいことになる。

 

●現行制度

 現行制度では居住用不動産の贈与等を行った場合、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等が無かった場合と同じになる。(被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない)

 

●新制度のメリット
 原則として居住用不動産の贈与等を、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱う必要がなくなり、配偶者はより多くの財産を取得することができる。(被相続人の贈与等の趣旨が反映された遺産の分割が可能になる)

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